すーめろ④

次。

村を出て走る。ある程度走ると、まあ余裕で間に合うっしょとのんきに歩き出す。

全行程の半分くらいまできてからの濁流&山賊。自分の不幸を嘆きながらなんとか難を逃れる。そこで精根尽き果て動けなくなり長い一人語り。

メ:友を欺く気なんかないし。できれば心臓を見したりたい。愛と信実の血液で動いているんや。でも大事なときに動けん。情けない。結果、間に合わんなら、はなからやらんのと一緒や。もういい。これが運命かもしれん。すまんセリヌンティウス。欺こうなんて思ってないねん。いまも信じてくれてんにゃろなあ。そう思たらつらい。でも信じてや。濁流も山賊の囲みも突破したんや。ワシやからできたんやで。だからもうええやん。

間に合わんだら王は独り合点しょるんやろ。ほれみわざと遅れてきょったと。そうなったら死ぬよりつらい。地上で最も、不名誉な人種や。一緒に死なせて。キミだけは信じてくれるやろ?いやそれも独りよがりか。もうええ。いっそ悪徳者としていきたろ。妹はさすがにワシを追いださんやろ。考えてみると正義とか愛とか信実とかあほらし。人を殺して生きるっちゅうのが人間の定法やろ。あほらし。

そうして四肢をなげだし寝る。

 

 

クライマックスにさしかかりいよいよ本性がでた。

(この一人語りは国語的には“勇者らしからぬ人間的で弱気な面”らしい)

村を出てまず走る。それはよい。しかしその理由は故郷への未練を断つためという独りよがりなものが大きい。そうして事を為すとまあ時間あるしと歩き出す。そら走れよとつっこまれる。

そうして濁流に橋が破壊され川が渡れなくなり嘆く。夏休みの最後の日に泣きながら宿題やる感覚と同じでしょう。無計画。

川も山賊もなんとか突破し力尽きる。いや計画的に走っていればどこかで休む時間もとれんちゃうのと思う。自業自得。

で挙句にとんでもなく言い訳がましいことをいいだす。

愛と信実の血液で動いている心臓って何だと。アンパンマンしか言う資格ないよと。

寝坊したのかと思うくらい寝たり、途中で歩いたりしてるにもかかわらず、間に合わないのは運命かもね頑張ったしほっといてってどの口が言えるのだと。

どうせだめなら最初からやらんのと同じだしこのまま村へ帰って悪徳者としていきてやろうあほらし。って町田康作品の登場人物みたいなことを考える始末。手に負えない。

自分の大好きな愛、正義、信実のために、友や妹や妹婿の家族等々に迷惑をかけこんなこというやつは勇者にしてはいけない。いまどき少年ジャンプでもないクサさだ。